湖畔からの発信 不動産鑑定士 村木康弘のひとり言

2015.04.08

不動産よろず相談所 個人向け不動産アドバイザリー業務(7)

 6.アドバイスメニュー

具体の解決方法は、CRE戦略として、これまで、この連載でも取り上げられているように、書籍や論文を紐解けば枚挙に暇がない。大企業だけの話でも、都会だけの話でもない。地方だって同じこと、中小企業だって個人だって同じことである。CRE戦略として論じられていることを、相談者の知識や理解度に合わせて、噛み砕いてアドバイスすればよい。
近時、相続対策で建てた賃貸マンションを新設する不動産保有会社に移転して節税を図るケースが増えている。背景には相続税負担の増加と法人税負担の軽減という政府の施策がある。これまで、賃貸マンションを建設して建物評価を下げて相続税額を減らす策が講じられてきたが、相続税の節税効果は年々薄らぐ一方で、所得税や社会保険等の負担が高まっているケースがある。その場合に、複数の相続人を新会社の役員等に据えて所得を分散し、一族全体で節税を図るスキームを構築する。相続税に対する世間の関心は高く、資産家向けにコンサルティングしている税理士と協働すると効果的な提案ができる。移転する不動産を、土地建物一体とするか、建物だけか、借地権を設定するか等、移転する不動産の類型と時価並びに家賃・地代の設定がスキーム構築の鍵となるので、不動産鑑定士の役割が重要になる。
賃貸マンションを建てて以来、施工したハウスメーカーの営業マンだけを頼ってきたという方が結構ある。その方に資産の評価はもとより賃貸マンションの収支状況や契約書について問題の有無を指摘しアドバイスすると、保有不動産のさまざまなことを相談できる人が見つかったと喜んで頂ける。

7.クライアントの満足度

不動産戦略立案のフローは、カウンセラーからするとアドバイスの手順であるが、相談者からすると納得感を得るための過程である。自らの目標を定め、その実現のために保有不動産をどうして行けば良いのかという方向性と実施スケジュールを定めるのであるから、一連の手順を踏んで自信を持って意思決定した暁には満足感と安心感に包まれるのだと思う。従って最適な選択肢だと決め付けて一方的に押し付けるのでなく、相談者自身が納得してそこに辿り着くようなアドバイスの方法が有効である。
先日、表面利回り10%の駅近の収益マンションを購入しようか迷って相談にこられた方があった。築19年の物件で、周囲の築浅物件と比較すると設備が見劣りし、今後は賃料減少と空室増加を避けて通れないので、その金額では購入すべきでない物件であると推察できた。しかし、私の意見を先に伝えるのでなく、エクセルで資金収支計画を作成し自己資金と借入金割合や賃料と空室率の設定をいろいろ変えてシミュレーションをして貰った。すると、年々の税引後のキャッシュフロー利回りを見て愕然とされ、仮に元本を繰上げ返済して20年で返済を終えたとしても、残るのは築39年の賃貸マンションであることに気づかれ、自ら買わないと判断された。
 我々が普段当たり前のようにやっている作業や当然の知識が、伝える相手と伝え方によって価値あるものになることを体得した場面であった。自己研鑽を怠ってはならないが、高度なもの、先進的なものばかりを追いかけずとも、相談者を満足させる素材は足元にいくらでもありそうだ。

8.テーマ着想のヒント

不動産鑑定評価の過程には多岐にわたる様々な専門性がある。対象不動産の確認、資料の収集・分析、価格形成要因の分析、鑑定評価方式の適用等々いずれも単独で価値のある専門性である。また、普段から取引事例を実査して回っているので、不動産を見る目が養われている。これらの専門性を従来活かしてこなかったため、世間一般で不動産鑑定士と一般の個人や中小企業とは接点が殆ど無かった。スポットで相談に来ていただいてもその方の全容が分からないと最適解が見出せない。そこで、CRE戦略マネジメントサイクルを噛み砕き、継続的にアドバイスするための簡単な仕組みに作り変えてみた。
我々には専門性がある。自信をもって、不動産で困っている人の話をきいてあげよう。一緒にしらべてあげよう。わかりやすく紐解いてあげよう。論点を整理しリスクを説明してあげよう。そうすれば、ありがとうという言葉がかえってくるはず。その先にきっと収穫があるとの思いから始めた取り組みである。

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